映画レビュー/概要

506本目 シェイプ・オブ・ウォーター
2017年
監督:ギレルモ・デル・トロ
主演:サリー・ホーキンス

評価:★★★

◯昔の無声映画並、というのは誇張しすぎかもしれませんが、サリー・ホーキンスの声を出さずに感情を表現するイライザ役の演技が圧巻。そりゃ賞も取りますわ。
◯あまりにも映像が美麗。水に纏わるシーンがあまりにもキレイすぎるので、IMAXで観たかったレベル。


推しキャラの幸せ、自分で作ってしまう


2017年に公開され、アカデミー賞作品賞を含む4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督の傑作『シェイプ・オブ・ウォーター』。
『大アマゾンの半魚人』の「ギルマンとジュリー・アダムスが結ばれていたら良かったのになぁ」というデル・トロ本人の空想がベースになっている。つまり、推しが結ばれれば……という悲願を映画化して達成してしまった、と言えるのです。

時は1960年代のアメリカ、冷戦の只中。
イライザは、政府の極秘研究施設で清掃員として働く声の出せない女性で、彼女の生活は単調で孤独。
とある日、施設に運び込まれた謎の水生生物と出会い、自然と恋に近い感情に……というのが本編の流れ。

冷戦時代ということで、政府はこの生物を兵器として利用するために実験を進めるが、音楽や手話を通じて絆を深めていく展開が意外にポップでユーモア有り。
それがずっと続けば……と思うあたりから一波乱発生してしまう。

ギレルモ・デル・トロが得意とするダークファンタジーの要素が色濃く反映され、青と緑を基調とした色彩設計が水の世界が非常に幻想的。
イライザのアパートや研究施設、さらには水の中のシーンまで、どのカットを切り取っても美しいので、絵画を鑑賞しているようにも感じられる。

特に、イライザが水生生物の前で踊るシーンや、水の中での幻想的なラストシーンは、視覚的にも感情的にも強く心に残る名場面です。
イライザは声を出せないことで社会から疎外され、ゲイの隣人ジャイルズや黒人女性ゼルダもまた、時代の偏見と闘っています。彼らはそれぞれに社会から疎外された存在であり、そのことがイライザの孤独と水生生物への共感につながっています。

ラストで水生生物が撃ち殺されないかドキドキではありましたが、なんとかハッピーエンドで終わってくれたので安堵しました。
この作品、場所や水の影響で全体的に暗めなので、最後に水生生物が撃ち殺されてしまったらどんよりした気分で終わってしまうところを「幸せになれよな!」と手を振って見送れる最後だったので本当に良かったです。

普段はアクションやSF、ホラーが多い鳴海ではありますが、たまにはこういう作品を挟むのも悪くありませんね。





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